医療再保険制度の役割:州政府の無保険者対策 (1)

Deborah Chollet, Ph.D. (2)
State Coverage Initiatives, The Robert Wood Johnson Foundation


目  次

  1. 序 文
  2. 従来型の再保険プログラム
    1. これまでの経緯
    2. コネティカット州 Small Employer Health Reinsurance Pool
    3. アイダホ州 Small-Group and Individual Reinsurance Pools
    4. マサチューセッツ州 Nongroup and Small-Group health Reinsurance Plans
    5. ニューメキシコ州 Health Insurance Alliance
  3. 補助金型の再保険プログラム
    1. アリゾナ州 Health Care Group
    2. ニューヨーク州 Healthy New York
  4. 州政府への教訓
  5. 結 論


1 序 文

過去数十年間、多くの州が、再保険制度を利用して、医療保険市場を安定させ、無保険者をなくそうと努力してきた。再保険制度とは、保険プログラムの中でも高額の保険請求を引き受けるものである。1980年代、いくつかの州では、再保険制度を採用して、保険料の高騰を抑制し、高額請求に苦しむ小企業を救済しようとした。1990年代はじめまで、各州は、再保険制度を利用して、少人数グループ市場を支援していたが、国民皆保険制度の導入議論の中で、消えていった。

クリントン政権が提案した皆保険制度の導入は、結局失敗に終わったものの、その議論の成果として、1996年のHealth Insurance Portability and Accountability Act (以下、HIPPA)が成立した。HIPPAは、グループ、個人の保険加入を保証するものであったが、そのコストや、グループ保険、個人保険の中で保険料に格差を設ける慣習にはメスを入れなかった。

近年、いくつかの州が再び再保険制度の考え方を導入し、保険市場のリスク分散、保険請求の予見可能性の向上、予測を超える保険請求に備えるための付加料率の抑制に役立てている。コネティカット州、アイダホ州、ニューメキシコ州、マサチューセッツ州は、再保険制度を利用して、小グループ、個人の保険加入を支援している。

アリゾナ州とニューヨーク州も再保険制度を利用しているが、これらは、小グループや低所得者の医療保険プランに補助金を提供するものである。


2 従来型の再保険プログラム
a これまでの経緯

1980年代、保険業者が積極的に医療保険を引き受けるようになり、小規模企業にとっては、医療保険を購入したり、維持したりすることが難しくなってきた。いくつかの州では、こうした事態に対処するため、保険会社の医療保険販売を直接抑制したり、小グループ医療保険制度を改正して小グループの加入、再加入を保証し、グループ内の再保険要素を禁止するほか、健康状態や保険契約期間による保険料の格差を禁止した(例えば長期契約をした小グループの保険料を高く設定するなど)。

多くの州では、保険会社が最初に引き受けをしやすいようにという誘導策として再保険プログラムを提案していた。加入者一律の再保険は、保険引き受けの競争意欲を削ぐことになるためである。

強制再保険プログラムに賛同した保険会社は少なく、大手保険会社は強く反対した。大手保険会社は、大手の保険引き受けが市場の不安定性の原因ではなく、従って、ビジネスの観点からも公益政策の観点からも、強制再保険プログラムは無意味である、と主張した。そのため、州政府の再保険プログラムは、稀にBlue Cross、Blue Shieldの加入を求めているものもあるが、多くは任意加入としている。

大手保険会社の支持が得られなかったために、ほとんどの州政府が、最終的に再保険プログラムを放棄してしまった。よって、再保険プログラムの有効性は検証できていない。偶々成立したHIPPAにより、おそらく小グループ市場で同様の目的を達成することはできたと思われる。同法により、小グループの保険者は、医療保険の引き受けを義務付けられ、グループ内での再保険は禁じられたからだ。

州政府が規制により小グループの保険料を抑制したことと、HIPPAとが相俟って、保険者は小グループ市場での積極的な保険販売を止めてしまった。そのせいもあって、1990年台後半、保険業界にM&Aの嵐が吹き荒れることとなった。同時に、ほとんどの保険会社は、少し大きな「小グループ」−5人以上の従業員グループ−に照準を当てるようになった。

現時点で、少なくとも21の州が再保険プール制度を持っているが、その多くは加入者が極端に少ないか、まったく加入者がいない状態に陥っている(3)。コネティカット、アイダホ、マサチューセッツ、ニュー・メキシコ各州の制度は、そうした再保険プール制度の代表例である。これらの州が再保険プログラムを運営している政策目的は、小グループ・個人の保険市場への支援、標準的な個人を対象としたハイリスク保険の強制引受、自営業者を含めた小グループ保険を引き受ける保険会社の連携などとなっている。

b コネティカット州 Small Employer Health Reinsurance Pool

1990年に設立されたコネティカット州の小企業再保険プールは、全米初の医療保険プールであり、その後、National Association of Insurance Commissioners (NAIC)(4) の再保険モデルとなった。

同州の再保険プールは、小グループ保険を提供する保険会社を対象としている。コネティカット州では、これら保険会社は、1人から50人規模のグループに保険を提供する義務を負っている。州内の小グループ保険会社は、労働者個人とその扶養家族、またはグループ全体を再保険の対象にすることができる。再保険の対象にするためには、保険加入から60日以内に申請しなければならない。1〜2人の従業員グループの場合には、さらに保険加入から3年毎に、再保険の対象に加えることができる。

週30時間以上働いている正規社員(およびその扶養家族)のみが、再保険の対象となる(5)。また、再保険プログラムでは、各保険会社の最低加入用件も受容している。保険会社は、それぞれの被保険者(グループ)が再保険の対象になっているかどうかを告知する必要はない。

再保険対象者一人当たり、再保険の免責額は$5,000に設定されている。それを超えた金額は、すべて再保険プールが支払う。再保険料は人数比例であり、被保険者の健康状態、地域性、喫煙の有無、その他による格付けは、法律で禁止されている(6)。制度施行後、37の保険会社が、27,000人以上の従業員、扶養家族を再保険の対象に加えている。2004年10月時点で、3,116人が対象となっており、その再保険料率の平均は年間約$4,500である。

プールの財源は、リスクを転嫁した保険会社が支払う再保険料と、コネティカット州内の小グループ市場でのシェアに応じて保険会社に賦課する割当金である。割当金は、各保険会社の小グループ保険料収入の1%以内と決められているが、その上限に達したことはない。

このプール制は、次のような2つのメリットがあると信じられているが、正式な政策評価は行われていない。
  1. コネティカット州の小グループ市場に、比較的多くの保険会社が参入している。
  2. 小グループの保険料率を抑制する。
c アイダホ州 Small-Group and Individual Reinsurance Pools

アイダホ州では、1994年から、Small Employer Health Reinsurance Programを運営している。プログラムの純損失を補填するために、すべての保険会社に割当金が課されることから、事実上、すべての保険会社が参加している。小グループ保険会社は、保険加入から60日以内であれば、グループ全体もしくは個別従業員、扶養家族を再保険の対象とする旨を通知することができる。

再保険は、医療保険の有効日から、適用となる。ただし、再保険の対象とするかどうかを決定する60日以内であれば再保険償還請求をしないこともできるし、経営者、従業員、扶養家族に再保険対象となっているかどうかを伝える必要もない。

再保険の償還内容は、アイダホ州Small Employer Health Insurance Availability Actに基づく小企業保険プランの内容により異なる(7)。小グループ保険会社は、毎年の各再保険対象者に係る最初の$12,000と、次の$13,000(basic)、$88,000(standard)もしくは$120,000(catastrophic)のいずれかの10%を負担する。2004年4月時点で、44の小グループプランが再保険に加入している。

コネティカット州と同様、再保険の財源は、リスクを転嫁した保険会社が支払う再保険料と、プールの純損失を補填するために全保険会社に課される割当金である。2003年の割当金総額は、$538,062のみである。

同州は、2001年から、Individual High-Risk Reinsurance Poolも運営している。この個人再保険プールは、4タイプの個人保険を対象としており、個人保険を扱う保険会社は、これらすべてのタイプを提供しなければならない。再保険料と償還の決め方は、州内の個別保険会社と同様である(8)。(個別保険会社は、他の保険商品の応募を拒否することができる。また、健康状態により、決められた範囲内で適用保険料率を変更することもできる。)

各保険会社は、各被保険者につき、年間一人当たり最初の$5,000、次の$25,000の10%を負担する。それ以上の金額は、全額再保険プールが負担する。2004年3月、1,358人が個人再保険プールの対象となっている。The High-Risk Reinsurance Poolの財源は、再保険料と、州保険税の一部で賄われている。

d マサチューセッツ州 Nongroup and Small-Group health Reinsurance Plans

マサチューセッツ州では、小グループ、個人を対象とした再保険プログラムを運営しているが、両者の対象者は極めて少ない。マサチューセッツ州のSmall Employer Health Reinsurance Planは、州内の民間小グループ医療保険すべてを対象としている。ただし、HMOは加入していない。1992年から運営されているが、このプログラムの対象は、従業員規模50人以下の企業の正規社員(週30時間以上かつ5ヶ月間以上の勤務が必要)、自営業者、パートナー、それら扶養家族に限られている。

コネティカット州と同様、小グループ保険会社は、グループ全体でも、グループ内の特定の個人でも、再保険の対象にすることができる。また、再保険の対象とするには、保険加入から60日以内に申請しなければならない。ただし、マサチューセッツ州のプログラムでは、小グループ内で対象資格のある従業員のうち75%以上は再保険対象としなければならない。この条項は、逆選択(adverse selection)を最小限にするためのものである。

リスクを再保険プランに転嫁した保険会社は、保険請求額のうち最初の$5,000、次の$50,000の10%を負担する。年間$55,000以上の請求は、再保険プランが全額負担する。一人当たりの月額保険料は、$300(グループ全体を再保険対象にした場合)から$2,100(個人の再保険の場合)まで幅がある。2004年の一人当たり月額保険料の平均は$800〜$1,000、コネティカット州の約2倍のレベルに達する。

すべての民間保険会社は、マサチューセッツ州の小企業再保険プールに参加しており、予測できなかった損失を補うために割当金が課されることになっているものの、そうした損失が発生しないような保険料が設定されるようになっている。2004年10月時点で、8プランが13人を再保険の対象としている。小グループ再保険の対象人数が極端に少ない理由は、保険料が高いだけでなく、HMOが参加していないことにもある。マサチューセッツ州では、HMOへの新規加入割合が高く、本来再保険にリスク転嫁すべきものが転嫁されていない。

マサチューセッツ州Nongroup Health Reinsurance Planは、個人の保険加入を保証し、健康状態による保険料格差をなくすことを政策目的としている。マサチューセッツ州では、個人による保険料格差全般を禁止している(9)

保険加入から60日以内であれば、保険プラン加入者の誰でも再保険の対象として申請することができる。保険会社は、最初の$10,000と、次の$40,000の10%を負担する。再保険プログラムは、年間$50,000超の部分を全額負担する。マサチューセッツ州のnongroup再保険プランは、2001年12月から運営されている。再保険プログラムの保険料は、成人一人当たり月額$4,000〜$6,500、子供一人当たり月額$4,500〜$7,800となっており、保険プランのタイプ(HMO、PPO、従来型の出来高払い方式)と、処方薬が対象に入っているかどうかによって異なる(10)

HMOを含め個人保険提供会社は、再保険プランに加入する必要がある。各保険会社はリスクを転嫁することができるが、再保険プランに損失が発生した場合には、保険料総額を基準にした割当金が課される。法律では、割当金は保険料総額の1%を超えることはできないとされている。個人保険再保険プランの保険料は、小グループ再保険と同様、割当金が発生しないような水準に設定される。

再保険対象者は極めて少なく、2004年10月時点で、わずかに3人だけである。その理由は、小グループ再保険と同様、再保険料が高水準である反面、ベネフィットが少ないことにある。さらに、マサチューセッツ州の場合、個人保険市場の寡占が進んでいるため、伝統的な再保険制度へのニーズが低い(11)

e ニューメキシコ州 Health Insurance Alliance

New Mexico Health Insurance Alliance (NMHIA)は、1994年に創設され、小グループの従業員(週20時間以上勤務する従業員50人以下)、自営業者、保険を失った個人に医療保険プランを提供する保険会社が加盟している。NMHIAは、グループ保険で企業側拠出の有無は問わないものの、加入資格のある従業員の半数以上が加入していることを条件として規定している(12)。自営業者とその家族にとっては、NMHIAがなければ州内での保険加入の保証はなくなる。

NMHIAの加入者は、のべ8,800人にのぼるが、近年その数は減少傾向にある。地域毎に保険料を設定しているHMOが減少していることと、保険料が高騰(13)していることが、原因となっている。現時点で、NMHIAは11の保険会社と契約しており、対象者は4,000人近くとなっている。そのうち約35%が個人保険であり、65%が小グループ保険である。

NMHIAは、直接保険料に補助を出すわけではないが、加盟保険会社に再保険を提供しており、再保険料は加盟保険会社が集めた保険料から徴収している。小グループの場合、再保険料は、保険に加入した年の保険料の5%、更新の年の保険料の最大10%である。また、個人の場合、保険に加入した年の保険料の10%、更新の年の保険料の最大15%である。平均再保険料は、10%程度で推移している(14)

毎年、再保険基金は、加盟保険会社に対して、保険請求額と再保険料の合計額のうち、保険料収入の75%を超える額を償還する。再保険料を超える損失が発生した場合には、全保険料収入(再保険加入分だけではない)をベースに割当金を課す。毎年の割当金の最高額は、$4.5M(2003年)と定められている。各保険会社は、割当金の50%を税額控除できるが、残りの50%は補助を受けられない。

3 補助金型の再保険プログラム

アリゾナ州とニューヨーク州の2州は、補助金を提供する再保険プログラムを設立し、小グループや、保険プランを提供されていない低賃金従業員の医療保険加入を奨励している。両州は、この制度を利用して、保険会社のリスク・プールを形成している。両制度の主な役割は、小グループ、自営業者の高額医療費のリスクをカバーすることにあり、各保険プランの保険料を直接補助するわけではない。また、両プログラムとも、企業に替わって保険プランを提供することはしない。実際、従業員の間では、これらの制度はほとんど認識されていない。小グループ市場を政策対象としているものの、自営業者とその家族も対象に含めている。

a アリゾナ州 Health Care Group

アリゾナ州のHealth Care Group (HCG) は、保険会社と提携して、小グループ、自営業者用の医療保険プランを提供している。保険加入の際、従業員の所得要件はない。

当初、HCGは、加入審査にあたって、自営業者の場合は以前保険に加入していたかどうか、また従業員の場合は企業が保険プランを提供していないかどうかを問うことはなかった。しかし、逆選択を回避するために、企業の従業員グループの場合には、高い加入率を要求している。6人以上のグループの場合、従業員の加入率は80%以上でなければならないし、6人未満では100%でなければならない。企業の拠出は要件となっていない。また、HCGの保険料は、年齢区分に基づく。

一般の保険市場では加入が保証されていない個人およびその家族も含め、契約保険会社はHCG申請者を必ず保険プランに加入させなければならない。その代わり、HCGは、高額医療費のリスクを引き受ける。2004〜2006年の州予算で、HCGに年間$4Mが手当てされている。これらは、保険料の86%を超える医療費の補填に充てられたり、年間請求費が$100,000を超える場合に備えた民間再保険の購入費に充てられている。

2004年8月時点で、HCG加入者は11,734人であり、そのうちの約70%が自営業者である。HCGは、アリゾナ州のMedicaidを運営するArizona Health Care Cost Containment System (AHCCCS)の中の独立した組織として運営されている。HCGは保険料に補助を出すことはなく、また、その加入資格は、所得や報酬に基づいて発生するものではない。

これまで、HCGは3つのHMOと契約しているが、いずれのHMOもAHCCCSと契約している。HCGは、保険料の2%相当分を、再保険プールには拠出せずに留保しておくことができる。HCGと契約している保険会社は、HCGに対して、財政および医療データを報告しなければならない。これらのデータに基づいて、HCGは、プログラムのコスト総額を抑制し、再保険の必要性を計測する。

HCGへの加入促進策として、2005年から、民間保険会社は、AHCCCSと契約しなくても、HCGと契約できるようになった。さらに、小グループが通常の民間保険プランからHCGプランに移行してしまうのではないかとの保険会社の懸念を解消するため、HCGへの加入を申請する場合には、その直前に無保険期間が6ヶ月以上なければならないと規定している。

b ニューヨーク州 Healthy New York (15)

Healthy New York (HNY) は、2001年に創設され、低中賃金の労働者を抱える企業、自営業者、個人を対象としている。従業員50名以下の企業に加入資格があるが、年間報酬$32,000未満(金額は毎年調整)の従業員が30%以上でなければならない。さらに、企業が医療保険を提供していないか、前年のグループ保険への拠出が月額$50以下でなければならない。

HNYには、逆選択を防止する規定がいくつかある。例えば、加入資格のある従業員の半分以上は加入しなければならない。また、企業側が保険料の半分以上を負担しなければならない。2003年7月時点では、加入資格のある小企業は、非常勤従業員の保険料拠出割合について、いくつかの選択肢が認められている。

自営業者や個人も、加入することができる。その際の条件は、次の通りである。(16) ただし、COBRA、またはニューヨーク州の公的プログラムの加入者でも、HNYに直接加入できる。

2001年に施行されて以来、HNYに101,665人以上が加入した。2004年8月時点で、約67,000人が現役として加入しており、毎月平均5,500人の新規加入がある。2003年12月時点で見ると、加入者の59%が労働者個人、21%が自営業者、同じく21%が小グループ従業員である。個人加入のうち61%が被扶養者なしで加入している(17)

HNYと契約できるのは、HMOのみである。現在は、24のHMOが契約している。すべてのHMOは、HNY加入申請があれば、必ず引き受けなければならない。また、その保険料も、地域で一律の固定レートでなければならない。これは、ニューヨーク州法で、個人、小グループ保険の加入が保証され、純粋に地域固定保険料でなければならないことと整合している(18)。さらに、HNY契約HMOは、小グループ、自営業者、個人について、どの分野で加入しても、単一の保険料を適用しなければならない。

HNYの再保険プログラムの利用方法は、契約しているHMO(19)によって異なる。契約HMOは、年間加入者一人当たり、$5,000-$75,000の保険請求の90%を償還請求することができる。この金額幅(契約HMOが償還請求できる保険請求幅)は、HNYプログラム開始当初よりは引き下げられた。これは、2003年7月以降の拠出金および補助金の増額によるものである(20)

2003年、Lewin Groupが独自に2002年(制度改正前)について推計したところ、HNYのプログラムを通じて、保険金支払いの約3.6%が軽減されたことがわかった。仮に、制度改正が2002年にも適用されていたとすると、HNYが約13.5%を負担していたことになる(21)。2003年、HNYからの償還額は、約$12Mに達したものとみられる。

4 州政府への教訓

本稿は、再保険プログラムを利用して小グループ、個人の医療保険加入率を高めたいと考えている州にとって、多くの有益な教訓を提供している。
  1. 再保険プログラムは、様々な市場規制を持つ州内の小グループ、個人の市場に有効である。マサチューセッツ州とニューヨーク州は、グループ、個人の加入を厳正に保証しており、そうした中で、再保険プログラムを運営している。特に、ニューヨーク州の場合は、低所得労働者にも加入しやすくなるように配慮している。コネティカット州では、小グループの再保険制度により、個人の加入保証も支えている。

    他方、アリゾナ州、アイダホ州では、規制が厳しくない中で再保険プログラムを運営している。また、両州とも、保険へのアクセスの改善を主目的にしている。アリゾナ州のプログラムは、グループ保険に入れなかったり、個人での加入が保証されていないような自営業者も加入対象にしている。アイダホ州のプログラムでは、個人から加入申請があれば必ず受け入れなければならない。他の保険商品の場合には、申請者の健康状態によっては加入を拒否することができる。

  2. 再保険料、償還内容、保険会社との契約ルールが、成功の鍵となる。コネティカット州の再保険プールは、償還額が大きい。$5,000の免責額を超過した分は、すべて償還する。さらに、小グループ市場に参入している保険会社は、強制加入となっている。また、小グループ保険の場合、保険契約時点から3年ごとに、再保険への加入を申請することができる。その結果、再保険への加入が比較的多くなるため、小グループの保険料を安定化させることができ、小グループ市場に保険者をとどまらせることができると考えられている。

    他方、マサチューセッツ州の小企業対象の再保険料は、コネティカット州の約2倍に達する。また、償還額も、$5,000超の90%、$50,000超の全額と、少ない。保険会社は、再保険加入申請を一度しかできないし、HMOは契約すらできない。結果、マサチューセッツ州の再保険プールは極めて小さい。

  3. 再保険プログラムがあったとしても、市場では行わないようなことを州政府の再保険プログラムがしようとすれば、逆選択が発生してしまう。例えば、第1次保険プランが通常よりも高コストのグループ、個人にとって魅力的であったとすると、再保険のコスト、そして結果的には保険システム全体のコストは高くなる。ニューメキシコ州の小グループ保険市場では、自営業者や2〜5人の小グループについて、保険会社は加入を拒否することができるため、彼らの保険加入が阻害されている。NMHIAは、両者を標準保険料で受け入れているが、その保険料自体が民間保険会社のそれよりも15〜25%高くなっている(22)

  4. 再保険プログラムのルールと市場のルールをバランスさせることで、逆選択を防止するための規制を緩和することは可能である。ニューヨーク州の小グループ、個人の市場は、州法とHNYが、加入保証と地域一律保険料という同じルールを設けているため、プログラムへの加入の障害が少なく、逆選択もおこりにくい。

  5. 小グループに提供している補助金はわずかでも、再保険プログラムを拡張すると、民業圧迫を引き起こす。無保険の労働者およびその家族をなるべく加入させることを目的としているために、アリゾナ州のHCGは、民間保険会社にとって民業圧迫になるとの懸念を認めている。そこで、直前の6ヶ月間以上無保険であったことを、HCGの加入要件としている。

    HNYは、もっと政策目標を限定している。個人または小グループの低所得労働者で、補助がなければ医療保険を購入できないと思われる者を対象としている。こうした方針は、プログラムの存在をアピールすることは難しくなるが、民業圧迫という懸念は減少する。それでも、HNYは、加入申請前12ヶ月の無保険期間を要件としている。

5 結 論

どの州でも、再保険プログラムが、州民全員の保険加入という難題を解決する魔法の杖となるとは考えられない。しかし、いくつかの課題を同時に解決することで、州レベルの再保険プログラムが、保険加入の安定、拡張を実現する有効な戦略となりうる。特に、補助金を出す場合、再保険プログラムは保険料の高騰をある程度抑制することができる。保険料が高騰すれば、低所得労働者には保険が購入できなくなったり、小企業は保険プランを提供できなくなってしまう。また、再保険プログラムにより、自営業者、個人の保険加入も改善させることができる。

ただし、再保険プログラムの設計は、慎重に行うべきである。マーケット全体をカバーするような再保険プログラムの場合、保険料が高く、保険会社の参加が少なければ、加入人数は極めて少なくなる。民間保険に補助を出すような再保険プログラムを利用している州では、再保険により参加保険会社の間でリスク分散できるようになるものの、民間保険会社における逆選択を回避することはできない。従って、そのようなプログラムを検討する州は、再保険プログラムと市場の規制のバランスを図り、逆選択の可能性を念頭に置きながら加入資格要件を定める必要がある。




(1)  本稿は、"The Role of Reinsurance in State Efforts to Expand Coverage, Issue Brief, Vol. X, No.4, October 2004"の仮訳である。原文はここ。(本文に戻る

(2)  Washington DCにあるMathematica Policy Researchのsenior fellow。民間医療保険に関する研究が専門。民間医療保険、医療改革に関して、州政府に専門的なアドバイスを行っている。また、Robert Wood Johnson Foundationの上級顧問も勤めている。(本文に戻る

(3) 再保険プール制度のある21州のうち、少なくとも1人以上の加入者がいるのは、アラスカ、コネティカット、フロリダ、アイダホ、インディアナ、マサチューセッツ、ネブラスカ、ノース・キャロライナ、オハイオ、オクラホマ、サウス・キャロライナ、テネシー、テキサス、ワイオミングの各州。また、まったく加入者がいないのは、アリゾナ、コロラド、アイオワ、ミネソタ、カンザス、オレゴンの各州。(本文に戻る

(4) 全米各州の医療保険担当局の連合体。情報の共有、制度的な整合性、制度モデルの提供などを目的に活動している。(本文に戻る

(5) 新生児の場合は、誕生時点で母親が再保険対象者となっている場合に限り、再保険対象とすることができる。また、再保険対象者の新生児は、自動的に再保険対象者となる。(本文に戻る

(6) 規定する法律は、ここ。(本文に戻る

(7) アイダホ州Rule 18.01.70により、同法の詳細と特別な償還内容が規定されている。(本文に戻る

(8) 再保険プールの償還内容は、免責額($500〜$5,000)、終身給付限度額($500,000〜$1M)、保険料負担割合(20%〜50%)、年間窓口負担限度額($10,000〜$20,000)により、異なる。(本文に戻る

(9) マサチューセッツ州の保険会社は、個人の加入を拒否すること、または、個人の健康状態によって加入を拒否できるような条項を設けることを禁じられている。保険料は、年齢、地域、給付内容を反映させることはできるものの、一定の範囲内でなけれならないし、加入者の特性を反映させることはできない。(本文に戻る

(10) 子供の再保険料が高いのは、新生児のコストが高く見積もられているためと考えられる。(本文に戻る

(11) Chollet, D. et al. "Mapping State Health Insurance Markets, 2001: Structure and Change" The Robert Wood Johnson Foundation's State Coverage Initiatives Program, September 2003 。2001年時点で、マサチューセッツ州の個人保険市場は、3社が97%を占めていた。他の条件が等しければ、大規模な保険会社は、再保険を必要とは考えない傾向にある。(本文に戻る

(12) NMHIAは、HIPPA加入資格のある個人もカバーしている。対象者は、@企業、教会、政府の保険プランで、18ヶ月以上(空白期間は63日以内)加入していた者、ACOBRAを利用しきってしまった者、B企業が提供する医療保険プランの加入資格がない者である。(本文に戻る

(13) Silow-Carrloo, S. et al. "Assessing State Strateies for Health Coverage Expansion: Profiles of Arkansas, Michigan, New Mexico, New York, Utah, and Vermont" The Commonwealth Fund, February 2003。(本文に戻る

(14) NMHIAは、別途、保険料の3.5%を運営費として徴収している。(本文に戻る

(15) 当websiteの「Topics 2005年1月20日 NY州の医療再保険プラン」参照。(本文に戻る

(16) "Report on the Health NY Program 2003"The Lewin Group、Empire Health Advisors for the New York State Insurance Department。個人の場合、直前の12ヶ月間、無保険である必要がある。無保険となった理由としては、失業、家族・被保険者の死亡、保険プランのない企業への転職、引越し、グループ保険商品の廃止、保険継続期間(COBRA)の終了、法的離別・離婚・婚姻無効、グループ保険の加入資格喪失、被扶養者の最高年齢オーバーなど。(本文に戻る

(17) 出典は注(16)と同じ。HNYでは、家族で加入する場合の保険料は3段階(大人2人、大人1人子供1人、両親と子供)と定められている。(本文に戻る

(18) ニューヨーク州では、グループ、個人の保険料について、個々の企業や加入員の特性を反映させることは許されていない。保険料の格差は、地域、家族の人数、給付内容によるものしか認められていない。(本文に戻る

(19) 原文では"HMO"ではなく、"HCG"と表記されているが、文意からみて、訳者の判断でHMOとした。(本文に戻る

(20) 出典は注(16)と同じ。2003年7月以前は、HNYがカバーする保険請求の金額は、$30,000-$100,000の90%であった。2003年7月の措置により、保険料が約17%引き下げられた。また、同措置により、処方薬もオプションとなった。(本文に戻る

(21) 出典は注(16)と同じ。HNYと契約しているHMOの経費率(2002年)は、HNYを除いたベースでは92.5%、HNYを含めたベースでは88.9%となる。しかし、どのプランも加入率が低く(加入人数3,000人に達するプランはない)、加入資格審査が必要な個人の加入が多い。その結果、典型的な民間保険会社に比べ、加入員一人当たりの管理コストは高くなっている。(本文に戻る

(22) Silow-Carrloo, S. et al. "Assessing State Strateies for Health Coverage Expansion: Profiles of Arkansas, Michigan, New Mexico, New York, Utah, and Vermont" The Commonwealth Fund, February 2003。(本文に戻る